| 「ネット戦略マネジャー」とは耳慣れない言葉でしょうが、実際には多くの先進的な企業で誕生している注目のポジションです。営業や開発・製造といった現場レベルのビジネスと、企業の方向性を決断する経営層、それに情報システムをつかさどるIT部門の間に立って、ビジネスのやり方そのものを変えていくためのネット戦略を実際に指揮する「新時代の司令塔」とも言えます。
こうした役割が重要になっている背景には、長引く不況からの脱出をすべての企業が模索しているという状況があります。顧客は「カネ」の使い方を一段と厳しく吟味するようになってきました。多くの選択肢を素早く比較検討し、本当に満足の得られるものとしかビジネスを行わなくなっています。そして、そうした"吟味"の行動には、インターネットが欠かせなくなっています。逆に見ればネットを活用して、いかに顧客に選ばれるビジネスを実現するかが課題になっているのです。顧客本位のビジネスを、いかにスピードアップしながら実現するか。これこそがネット戦略そのものなのです。
また、今後5年間に国を挙げて取り組む「e-Japan重点計画」の存在も見逃せません。超高速のネット接続インフラが整備され、ネットを通じた商取引の活性化に多くの「ヒト、モノ、カネ」が投入されます。経済産業省の調査によれば2006年には、企業間の電子商取引の規模は125兆円に達し、すべての商取引のなかで、ネットを経由するものの比率も17.5%にまで増加すると予測されています。こうした大きなネット化のうねりの中で、企業はそれを無視しては生き残れない状況に置かれています。
こうしたネット戦略を立案し、実行していく役割は、単にネットビジネス部門だけが負っているのではありません。ネット戦略は企業戦略そのものですから、経営陣のトップダウンによるリーダーシップは欠かせませんし、企業の一部門だけのネット化ではなく、ネットによる"本業"全体の改革には、企業の基幹システムとの連携も欠かせません。内外の先進企業では、情報システム担当役員(CIO)とは別に、企業変革を担当するCDO(Corporate
Development Officer)という役員が置かれ始めています。このCDOが権限を保証し、企業のネット戦略を立てて実行するのが「ネット戦略マネジャー」です。
今、時代は「ネット戦略マネジャー」を求めています。顧客満足を追求し企業の競争力をアップする中核を担うためです。実際にその役割を果たしているのは、現場出身者であり、IT部門出身者であり、また従来のネットビジネス部門出身の人たちです。
『日経ネットビジネス』はこうした「ネット戦略マネジャー」に焦点を当てた実務情報誌です。ネット戦略の立案に必要な技術、法律、市場などの最新動向や経営理論などを詳しくお届けします。また、ネット戦略の遂行に必要な製品やサービスを選択するための知識やスキルなども、体系的に取り上げて解説していきます。今後は「経営、IT、現場」の密接な連携こそが、企業の成長のカギを握ることになるでしょう。『日経ネットビジネス』は、これら3つのポジションの方々を主な読者層として、実務に直結した情報を提供します。
この閉塞感に覆われたビジネス環境を、「ネット戦略マネジャー」が存分に力を発揮して打開していくことが求められています。その役割を果たすのが、本誌の読者の皆様一人ひとりであることを願っています。
『日経ネットビジネス』編集長 渡辺和博
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